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第5回(2019年度)

受賞作品一覧

大賞

大賞

清原亮介さん (11歳/大阪府)

うちの母さんは何でもぼくの教育につなげようとします。
ありとあらゆる事がそうです。
ぼくに楽しい事をさせてくれるのも勉強をビシバシやらせるための作戦だと思います。
こんな母さんでも好きですが、何でも教育につなげる事は欠点だと思います。
もっと教育とは関係なくたっぷりと好きな事をやらせてほしいです。
もっともっと、夏休みでも、もっと自由になりたいです。
この願いが、かないますように。

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佳作

佳作 【五木寛之賞】

【五木寛之賞】 宮﨑美空さん (7歳/和歌山県)

わたしはぜんそくをもっています。
ママもおなじです。
だからママのしんどさがわかります。
みんなとちがうびょうきです。
ぜんそくになったひとしかこのしんどさがわかりません。
だけどぜんそくになってうれしいです。
なぜかとゆうとママのしんどさがわかるからです。
ですがママは、こどものころからぜんそくをもっていることをしっています。
だからママはずーっとしんどいおもいをしているからかわいそうなので
ママのぜんそくがなおりますように。

※原文の表記を少し変更しています。

わたしはぜんそくをもっています。 ママもおなじです。 だからママのしんどさがわかります。 みんなとちがうびょうきです。 ぜんそくになったひとしかこのしんどさがわかりません だけどぜんそくになってうれしいです。 なぜかいうとママのしんどさがわかるからです。 ですがママは、こどものころからぜんそくをもっていることをしっています。 だからママはずーっとしんどいおもいをしているからかわいそうなので ママのぜんそくがなおりますように。  ※原文の表記を少し変更しています

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わたしはぜんそくをもっています。 ママもおなじです。 だからママのしんどさがわかります。 みんなとちがうびょうきです。 ぜんそくになったひとしかこのしんどさがわかりません だけどぜんそくになってうれしいです。 なぜかいうとママのしんどさがわかるからです。 ですがママは、こどものころからぜんそくをもっていることをしっています。 だからママはずーっとしんどいおもいをしているからかわいそうなので ママのぜんそくがなおりますように。  ※原文の表記を少し変更しています
佳作 【村山由佳賞】

【村山由佳賞】 金持真須美さん (64歳/兵庫県)

わしのだいじ

「だいじなこと わすれてしまいよる エライこっちゃ」と
スタッフに訴えた大正生まれの父
車椅子生活も3年目
先月よりいよいよ点滴だけが命綱となる

パジャマのズボンから
小さく折りたたんだ大きな紙が一枚
広げたそこに私と夫の名前だけが書かれていた
それを見せて「わしのだいじ」と…。

帰り際、「またあしたね」と言うと
「わしのだいじやから しもとく」と
おへその上に両手でしまいました。

お父さん、どうか 苦しまないでね。

 わしのだいじ  「だいじなこと わすれてしまいよる エライこっちゃ」と  スタッフに訴えた大正生まれの父  車椅子生活も3年目  先月より いよいよ点滴だけが命綱となる   パジャマのズボンから  小さく折りたたんだ大きな紙が一枚  広げたそこに私と夫の名前だけが書かれていた  それを見せて「わしのだいじ」と…。   帰り際、「またあしたね」と言うと 「わしのだいじやから しもとく」と  おへその上に両手でしまいました。   お父さん、どうか 苦しまないでね。

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 わしのだいじ  「だいじなこと わすれてしまいよる エライこっちゃ」と  スタッフに訴えた大正生まれの父  車椅子生活も3年目  先月より いよいよ点滴だけが命綱となる   パジャマのズボンから  小さく折りたたんだ大きな紙が一枚  広げたそこに私と夫の名前だけが書かれていた  それを見せて「わしのだいじ」と…。   帰り際、「またあしたね」と言うと 「わしのだいじやから しもとく」と  おへその上に両手でしまいました。   お父さん、どうか 苦しまないでね。
佳作 【齋藤 孝賞】

【齋藤 孝賞】 後藤 順さん (65歳/岐阜県)

バスの乗客のみなさんへ

その少女が降車ボタンを押すまで、乗客のみなさん、押さないでください。
養護学級へひとりで通う少女ですよ。
お母さんに教えられた「このボタンを押すのよ」との手順が狂ってしまうと、バスから降りられなくなります。
常連の乗客のみなさん。
口伝えに、新しい乗客の方々に教えてもらえないでしょうか。
いつも笑顔の可愛い赤い帽子をかぶった、運転席の後ろの席にいる子に、降車ボタンを押させてやって下さい。

バスの乗客のみなさんへ  その少女が降車ボタンを押すまで、乗客のみなさん、押さないでください。 養護学級へひとりで通う少女ですよ。 お母さんに教えられた「このボタンを押すのよ」との手順が狂ってしまうと、 バスから降りられなくなります。 常連の乗客のみなさん。 口伝えに、新しい乗客の方々に教えてもらえないでしょうか。 いつも笑顔の可愛い赤い帽子をかぶった、 運転席の後ろの席にいる子に、 降車ボタンを押させてやって下さい。

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バスの乗客のみなさんへ  その少女が降車ボタンを押すまで、乗客のみなさん、押さないでください。 養護学級へひとりで通う少女ですよ。 お母さんに教えられた「このボタンを押すのよ」との手順が狂ってしまうと、 バスから降りられなくなります。 常連の乗客のみなさん。 口伝えに、新しい乗客の方々に教えてもらえないでしょうか。 いつも笑顔の可愛い赤い帽子をかぶった、 運転席の後ろの席にいる子に、 降車ボタンを押させてやって下さい。
佳作

加藤葵衣さん (16歳/神奈川県)

島を離れて5年。
私はもう高校生になりました。
横浜は便利な街です。
コンビニはそこら中にあるし、
学校帰りにタピオカを飲んだり、休みには、渋谷や原宿に行ったりもします。
田植えの手伝いもなければ、村長の家で皆してカチャーシー踊ることもありません。
信じられんかもしれんけど、魚はスーパーで買います。
誰もくれんからね。
あの頃は、こんな何もないとこ、はやく出たいって思ってたけどさ、
わーはやっぱり、ウチナーンチュだったさぁ
ああ、島にかえりたいなぁ

島を離れて5年。 私はもう高校生になりました。 横浜は便利な街です。 コンビニはそこら中にあるし、 学校帰りにタピオカを飲んだり、休みには、 渋谷や原宿に行ったりもします。 田植えの手伝いもなければ、 村長の家で皆してカチャーシー踊ることもありません。 信じられんかもしれんけど、魚はスーパーで買います。 誰もくれんからね。 あの頃は、こんな何もないとこ、はやく出たいって思ってたけどさ、 わーはやっぱり、ウチナーンチュだったさぁ ああ、島にかえりたいなぁ

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島を離れて5年。 私はもう高校生になりました。 横浜は便利な街です。 コンビニはそこら中にあるし、 学校帰りにタピオカを飲んだり、休みには、 渋谷や原宿に行ったりもします。 田植えの手伝いもなければ、 村長の家で皆してカチャーシー踊ることもありません。 信じられんかもしれんけど、魚はスーパーで買います。 誰もくれんからね。 あの頃は、こんな何もないとこ、はやく出たいって思ってたけどさ、 わーはやっぱり、ウチナーンチュだったさぁ ああ、島にかえりたいなぁ
佳作

櫻井 梓さん (27歳/愛知県)

結婚2年目、幸せ太りが気になるこの頃。
結婚当初、夫にお姫さま抱っこをせがむと微笑んで頷いた。
以心伝心に憧れ、先日じっと見つめると夫は私の肩を抱いたと思いきや、まさかの大外刈。
緩やかにソファに横にされた私は、不思議な浮遊感に満面の笑み。
夫が予想外の反応に笑い、私もさらに笑った。
甘やかなものとは少し違うが構わない。
こんな日常を重ねてゆきたいと心から願う。
でも体重が戻ったらお姫さま抱っこもしてもらおう。

結婚2年目、幸せ太りが気になるこの頃。 結婚当初、夫にお姫さま抱っこをせがむと微笑んで頷いた。 以心伝心に憧れ、先日じっと見つめると 夫は私の肩を抱いたと思いきや、まさかの大外刈。 緩やかにソファに横にされた私は、不思議な浮遊感に満面の笑み。 夫が予想外の反応に笑い、私もさらに笑った。 甘やかなものとは少し違うが構わない。 こんな日常を重ねてゆきたいと心から願う。 でも体重が戻ったらお姫さま抱っこもしてもらおう

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結婚2年目、幸せ太りが気になるこの頃。 結婚当初、夫にお姫さま抱っこをせがむと微笑んで頷いた。 以心伝心に憧れ、先日じっと見つめると 夫は私の肩を抱いたと思いきや、まさかの大外刈。 緩やかにソファに横にされた私は、不思議な浮遊感に満面の笑み。 夫が予想外の反応に笑い、私もさらに笑った。 甘やかなものとは少し違うが構わない。 こんな日常を重ねてゆきたいと心から願う。 でも体重が戻ったらお姫さま抱っこもしてもらおう
佳作

野口 玲さん (44歳/青森県)

幼いあなたと赤ちゃん、私の三人暮らし。
あなたは三歳にして小さなお父さん。
家中の施錠の指差し確認をする姿、
幼いながらも頼もしかったよ。

ある晩、寝つかない弟に添い寝して
あなたに背を向け続ける私に、
「赤ちゃんが寝たら 僕の方向いてね。」
と言ってくれたね。
待ち疲れて眠ってしまったあなたの頬の、
一筋の涙の跡が、今も忘れられない。

今夏、あなたは二十歳になった。
母はずっと心の中で抱きしめているよ。
次は私が背中を見守る番。
快人(かいと)、幸せになって下さい。

幼いあなたと赤ちゃん、私の三人暮らし。  あなたは三歳にして小さなお父さん。  家中の施錠の指差し確認をする姿、  幼いながらも頼もしかったよ。   ある晩、寝つかない弟に添い寝して  あなたに背を向け続ける私に、 「赤ちゃんが寝たら僕の方 向いてね。」と言ってくれたね。  待ち疲れて眠ってしまったあなたの頬の、  一筋の涙の跡が、今も忘れられない。   今夏、あなたは二十歳になった。  母はずっと心の中で抱きしめているよ。  次は私が背中を見守る番。  快人かいと、幸せになって下さい。

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幼いあなたと赤ちゃん、私の三人暮らし。  あなたは三歳にして小さなお父さん。  家中の施錠の指差し確認をする姿、  幼いながらも頼もしかったよ。   ある晩、寝つかない弟に添い寝して  あなたに背を向け続ける私に、 「赤ちゃんが寝たら僕の方 向いてね。」と言ってくれたね。  待ち疲れて眠ってしまったあなたの頬の、  一筋の涙の跡が、今も忘れられない。   今夏、あなたは二十歳になった。  母はずっと心の中で抱きしめているよ。  次は私が背中を見守る番。  快人かいと、幸せになって下さい。
佳作

綱島身知子さん (50歳/東京都)

私が10才まで家族4人八畳一間のアパートに住んでいました。
父も母も働きづめで家族揃っての夕飯は日曜日だけです。
毎週日曜日の夕方 父が「さぁパーティーだ」と、こたつ机の隣りにもう一つ机をつけ 母は私と弟の好物を並べてくれます。
楽しくて嬉しくて弟とたくさん食べ たくさん笑いました。
また、あの部屋でパーティーしたいね。
机の上は隙間が目立っていたけれど思いの溢れた毎週のパーティーがあったから、今の私と弟が居ます。

私が10才まで 家族4人八畳一間のアパートに住んでいました。 父も母も働きづめで家族揃っての夕飯は日曜日だけです。 毎週日曜日の夕方 父が「さぁパーティ―だ」と、こたつ机の隣りに もう一つ机をつけ 母は私と弟の好物を並べてくれます。 楽しくて嬉しくて弟とたくさん食べ たくさん笑いました。 また、あの部屋でパーティ―したいね。 机の上は隙間が目立っていたけれど 思いの溢れた毎週のパーティーがあったから、 今の私と弟が居ます。

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私が10才まで 家族4人八畳一間のアパートに住んでいました。 父も母も働きづめで家族揃っての夕飯は日曜日だけです。 毎週日曜日の夕方 父が「さぁパーティ―だ」と、こたつ机の隣りに もう一つ机をつけ 母は私と弟の好物を並べてくれます。 楽しくて嬉しくて弟とたくさん食べ たくさん笑いました。 また、あの部屋でパーティ―したいね。 机の上は隙間が目立っていたけれど 思いの溢れた毎週のパーティーがあったから、 今の私と弟が居ます。
佳作

赤井美芳さん (65歳/大阪府)

九歳上の夫は、偏屈もんの後期高齢者。
ものの弾みで結婚して、はや四十余年。
恋愛結婚やのに一ぺんも「好きや」なんて言われたことがないのは、ちょっと悔しいなぁ。
「昔の男やから」ってはぐらかすけど、昔の男かてきっと、こそっと囁いてはるはず。
タイムリミット迫ってるよ。
これ以上歳いったら、好きやて聞いても、ボケたんかなって思うでしょ。
今が潮時、早よ言うてみ!

九歳上の夫は、偏屈もんの後期高齢者。 ものの弾みで結婚して、はや四十余年。 恋愛結婚やのに一ぺんも「好きや」なんて言われたことがないのは、 ちょっと悔しいなぁ。 「昔の男やから」ってはぐらかすけど、 昔の男かてきっと、こそっと囁いてはるはず。 タイムリミット迫ってるよ。 これ以上歳いったら、好きやて聞いても、ボケたんかなって思うでしょ。 今が潮時、早よ言うてみ!

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九歳上の夫は、偏屈もんの後期高齢者。 ものの弾みで結婚して、はや四十余年。 恋愛結婚やのに一ぺんも「好きや」なんて言われたことがないのは、 ちょっと悔しいなぁ。 「昔の男やから」ってはぐらかすけど、 昔の男かてきっと、こそっと囁いてはるはず。 タイムリミット迫ってるよ。 これ以上歳いったら、好きやて聞いても、ボケたんかなって思うでしょ。 今が潮時、早よ言うてみ!
佳作

逸見洋子さん (86歳/東京都)

声は出るのに歌えない。
音階がはずれたり裏返ったり。
低い声だと少しつづくが、こんどは歌詞のことばに声がふるえ涙が出る。
いろんな事が思い出されて泣いてしまう。
昔から歌が好きだったのにこの十年余り一度も歌っていない。
夫の看病と介護。
それより辛かった長女との別れ。
夫も逝って三年。
今やっと歌いたい気持が巡ってきた。
録画した歌番組を見ながら口ずさんでいる。
大きい声で泣かないで歌えるようになりたい。

声は出るのに歌えない。 音階がはずれたり裏返ったり。 低い声だと少しつづくが、こんどは歌詞のことばに声がふるえ涙が出る。 いろんな事が思い出されて泣いてしまう。 昔から歌が好きだったのにこの十年余り一度も歌っていない。 夫の看病と介護。 それより辛かった長女との別れ。 夫も逝って三年。 今やっと歌いたい気持が巡ってきた。 録画した歌番組を見ながら口ずさんでいる。 大きい声で泣かないで歌えるようになりたい

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声は出るのに歌えない。 音階がはずれたり裏返ったり。 低い声だと少しつづくが、こんどは歌詞のことばに声がふるえ涙が出る。 いろんな事が思い出されて泣いてしまう。 昔から歌が好きだったのにこの十年余り一度も歌っていない。 夫の看病と介護。 それより辛かった長女との別れ。 夫も逝って三年。 今やっと歌いたい気持が巡ってきた。 録画した歌番組を見ながら口ずさんでいる。 大きい声で泣かないで歌えるようになりたい
佳作

坂下勇輔さん (89歳/北海道)

妻は満州から引揚げの途中凍傷で右足首の先を失い、義足を着けている。
杖を使って普通に歩いているが、先日の厚真の地震では階段は無理だった。
そこで「非常時には、おひめさまだっこで避難するから心配するな」と言って老骨に鞭(むち)を打ち、朝には鉄アレー、夕べにはエクスパンダ―で鍛えているが、もう少しです。
お願いです、ほんの少しだけ力を貸してください。

妻は満州から引揚げの途中凍傷で右足首の先を失い、義足を着けている。 杖を使って普通に歩いているが、 先日の厚真の地震では階段は無理だった。 そこで「非常時には、おひめさまだっこで避難するから心配するな」と言って 老骨に鞭(むち)を打ち、朝には鉄アレー、夕べにはエクスパンダ―で鍛えているが、 もう少しです。 お願いです、ほんの少しだけ力を貸してください

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妻は満州から引揚げの途中凍傷で右足首の先を失い、義足を着けている。 杖を使って普通に歩いているが、 先日の厚真の地震では階段は無理だった。 そこで「非常時には、おひめさまだっこで避難するから心配するな」と言って 老骨に鞭(むち)を打ち、朝には鉄アレー、夕べにはエクスパンダ―で鍛えているが、 もう少しです。 お願いです、ほんの少しだけ力を貸してください

日本郵便大賞

日本郵便大賞

丸山葵生さん (7歳/福岡県)

わたしは、大人になってじゆうになりたいです。
大人になったらしごとはあるけど、しごとがおわったらあとはじゆう。
じゆうなじかんになったらず――――――――っとねとく。
おきたら、またねる。
またおきたら、ソーセージだけたべる。
そして、またねる。
じゆうってしあわせ。

わたしは、大人になってじゆうになりたいです。 大人になったらしごとはあるけど、しごとがおわったらあとはじゆう。 じゆうなじかんになったらず――――――――っとねとく。 おきたら、またねる。 またおきたら、ソーセージだけたべる。 そして、またねる。 じゆうってしあわせ。

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わたしは、大人になってじゆうになりたいです。 大人になったらしごとはあるけど、しごとがおわったらあとはじゆう。 じゆうなじかんになったらず――――――――っとねとく。 おきたら、またねる。 またおきたら、ソーセージだけたべる。 そして、またねる。 じゆうってしあわせ。
日本郵便大賞

伯井誠典さん (42歳/大阪府)

靖、楽しみにしてた十連休。
肩を骨折して、ずっと病院で過ごして残念やったね。
でも実は、一緒に泊まりながら、お父さんは内緒で思っていたことがあります。
こんなに長い時間、靖と二人でいることなんて、もう二度とないやろなあと思ってました。
病室から見えた夕焼け。
テレビで応援した阪神タイガース。
探検で登った屋上。
お父さんはきっとずっと忘れません。
靖、もう二度と入院せんと、元気で大きくなれよ。

靖、楽しみにしていた十連休。 肩を骨折して、ずっと病院で過ごして残念やったね。 でも実は、一緒に泊まりながら、お父さんは内緒で思っていたことがあります。 こんなに長い時間、靖と二人でいることなんて、 もう二度とないやろなあと思ってました。 病室から見えた夕焼け。 テレビで応援した阪神タイガース。 探検で登った屋上。 お父さんはきっとずっと忘れません。 靖、もう二度と入院せんと、元気で大きくなれよ。

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靖、楽しみにしていた十連休。 肩を骨折して、ずっと病院で過ごして残念やったね。 でも実は、一緒に泊まりながら、お父さんは内緒で思っていたことがあります。 こんなに長い時間、靖と二人でいることなんて、 もう二度とないやろなあと思ってました。 病室から見えた夕焼け。 テレビで応援した阪神タイガース。 探検で登った屋上。 お父さんはきっとずっと忘れません。 靖、もう二度と入院せんと、元気で大きくなれよ。
日本郵便大賞

矢野さつきさん (46歳/奈良県)

野球が大好きな十歳の息子へ
レギュラーから外れ、ベンチでの応援になった試合の帰り、落ち込んでいるかと心配していたら、あなたは泥だらけの顔で誇らしげに笑った。
「お母さん、おれ、試合出られへんかったけど、代走でホームまで行ってんで。」
どうか、大人になってもその真っすぐな気持ちで、他と比べることなく、うらやむことなく、自分のホームベースを目指して進んでね。
お母さんはその日まで、心を込めてご飯を作るね。

野球が大好きな十歳の息子へ レギュラーから外れ、ベンチでの応援になった試合の帰り、 落ち込んでいるかと心配していたら、 あなたは泥だらけの顔で誇らしげに笑った。 「お母さん、おれ、試合出られへんかったけど、代走でホームまで行ってんで。」 どうか、大人になってもその真っすぐな気持ちで、 他と比べることなく、うらやむことなく、 自分のホームベースを目指して進んでね。 お母さんはその日まで、心を込めてご飯を作るね

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野球が大好きな十歳の息子へ レギュラーから外れ、ベンチでの応援になった試合の帰り、 落ち込んでいるかと心配していたら、 あなたは泥だらけの顔で誇らしげに笑った。 「お母さん、おれ、試合出られへんかったけど、代走でホームまで行ってんで。」 どうか、大人になってもその真っすぐな気持ちで、 他と比べることなく、うらやむことなく、 自分のホームベースを目指して進んでね。 お母さんはその日まで、心を込めてご飯を作るね
日本郵便大賞

田村 淳さん (60歳/和歌山県)

結婚して30年あまり
こたつテーブルを挟んで、妻が寝息をたてている。
と、言えば聞こえはよいが、これはもういびき。
恋人の時は、行き違いや切なさはあったが、ただただ楽しかった。
妻となってからは子育て、母の入院、会社の倒産
ガンとの闘病と次々におこり
やっと一息つけるようになって、
「ここが私の居場所よ」、といびきが証言している。
そうだね、そこが君の居場所になったね。
でも、二人でもう少し先まで行ってみよう。

結婚して30年あまり こたつテーブルを挟んで、妻が寝息をたてている。 と、言えば聞こえはよいが、これはもういびき。 恋人の時は、行き違いや切なさはあったが、ただただ楽しかった。 妻となってからは子育て、母の入院、会社の倒産 ガンとの闘病と次々におこり やっと一息つけるようになって、 「ここが私の居場所よ」、といびきが証言している。 そうだね、そこが君の居場所になったね。 でも、二人でもう少し先まで行ってみよう

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結婚して30年あまり こたつテーブルを挟んで、妻が寝息をたてている。 と、言えば聞こえはよいが、これはもういびき。 恋人の時は、行き違いや切なさはあったが、ただただ楽しかった。 妻となってからは子育て、母の入院、会社の倒産 ガンとの闘病と次々におこり やっと一息つけるようになって、 「ここが私の居場所よ」、といびきが証言している。 そうだね、そこが君の居場所になったね。 でも、二人でもう少し先まで行ってみよう
日本郵便大賞

白蓋 勉さん (64歳/鹿児島県)

孫を肩車した。
「じいちゃん、てっぺんが空(あ)いているよ。」
何という詩的表現だ。天空の神秘を理解している!
しかし、違った。
肩車によって、いつもは見上げていた私のおつむの〝てっぺん〟が空いている事に気づいたのだ。
幼子よ! 君もやがて気づくだろう。
多くの人のてっぺんが空いている事を。
いや、いつか自分の〝心のてっぺん〟が空いてしまうかもしれない。
でも覚えておいておくれ。
(じいちゃんが、てっぺんが空いていても強く、たくましく生きて来た事を!)

孫を肩車した。 「じいちゃん、てっぺんが空あいているよ。」  何という詩的表現だ。天空の神秘を理解している!  しかし、違った。  肩車によって、いつもは見上げていた私のおつむの〝てっぺん〟が  空いている事に気づいたのだ。  幼子よ! 君もやがて気づくだろう。  多くの人のてっぺんが空いている事を。  いや、いつか自分の〝心のてっぺん〟が空いてしまうかもしれない。  でも覚えておいておくれ。 (じいちゃんが、てっぺんが空いていても強く、たくましく生きて来た事を

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孫を肩車した。 「じいちゃん、てっぺんが空あいているよ。」  何という詩的表現だ。天空の神秘を理解している!  しかし、違った。  肩車によって、いつもは見上げていた私のおつむの〝てっぺん〟が  空いている事に気づいたのだ。  幼子よ! 君もやがて気づくだろう。  多くの人のてっぺんが空いている事を。  いや、いつか自分の〝心のてっぺん〟が空いてしまうかもしれない。  でも覚えておいておくれ。 (じいちゃんが、てっぺんが空いていても強く、たくましく生きて来た事を
日本郵便大賞

林 朋子さん (65歳/宮崎県)

母の葬儀を終えた夜、赤いポストの貯金箱を見つけた。
皆でワイワイ開けることに。
しかし中からこぼれ出たのは、畳んだ紙片の数々。
亡き父母や知人に宛てた年賀状で、近況や想い出を綴り、感謝の言葉で結ばれた可愛らしい文である。
てっきり硬貨が「ザックザク」と期待した一同に何ともしゃれた肩透かし。
母の「ヘヘヘ」が聞こえてくるような。
小さなポストに静かに積もった「言霊」が、どうか天国の名宛人に配達され、お返事が母にも届いていますように。

母の葬儀を終えた夜、赤いポストの貯金箱を見つけた。 皆でワイワイ開けることに。 しかし中からこぼれ出たのは、畳んだ紙片の数々。 亡き父ふ母ぼや知人に宛てた年賀状で、近況や想い出を綴り、 感謝の言葉で結ばれた可愛らしい文ふみである。 てっきり硬貨が「ザックザク」と期待した一同に何ともしゃれた肩透かし。 母の「ヘヘヘ」が聞こえてくるような。 小さなポストに静かに積もった「言霊」が、 どうか天国の名宛人に配達され、お返事が母にも届いていますように

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母の葬儀を終えた夜、赤いポストの貯金箱を見つけた。 皆でワイワイ開けることに。 しかし中からこぼれ出たのは、畳んだ紙片の数々。 亡き父ふ母ぼや知人に宛てた年賀状で、近況や想い出を綴り、 感謝の言葉で結ばれた可愛らしい文ふみである。 てっきり硬貨が「ザックザク」と期待した一同に何ともしゃれた肩透かし。 母の「ヘヘヘ」が聞こえてくるような。 小さなポストに静かに積もった「言霊」が、 どうか天国の名宛人に配達され、お返事が母にも届いていますように
日本郵便大賞

安田順子さん (66歳/岡山県)

母の葬儀を終えて自宅に戻る。
たまっていた留守電を整理していたら母の声が聞こえてきた。
「もしもし。」
「いつもこの電話で娘と話しているのですが今日はだめですか」
留守電の応答を昔の交換手と間違えていた。
母は毎日10回以上携帯にかけてきて困らせたので、一時私は出ない事があった。
今日はだめですかとくり返す声を聞くとかわいそうで泣けてきた。
お母さん ごめんね。もう1回かけてきて。
絶対出るから。話したいよ。

 母の葬儀を終えて自宅に戻る。  たまっていた留守電を整理していたら母の声が聞こえてきた。 「もしもし。」 「いつもこの電話で娘と話しているのですが今日はだめですか」  留守電の応答を昔の交換手と間違えていた。  母は毎日10回以上携帯にかけてきて困らせたので、一時私は出ない事があった。  今日はだめですかとくり返す声を聞くとかわいそうで泣けてきた。  お母さん、ごめんね。もう1回かけてきて。  絶対出るから。話したいよ。

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 母の葬儀を終えて自宅に戻る。  たまっていた留守電を整理していたら母の声が聞こえてきた。 「もしもし。」 「いつもこの電話で娘と話しているのですが今日はだめですか」  留守電の応答を昔の交換手と間違えていた。  母は毎日10回以上携帯にかけてきて困らせたので、一時私は出ない事があった。  今日はだめですかとくり返す声を聞くとかわいそうで泣けてきた。  お母さん、ごめんね。もう1回かけてきて。  絶対出るから。話したいよ。
日本郵便大賞

渋江康弘さん (75歳/神奈川県)

思い出探しに

東京五輪 恋人同士の君と僕
アスリートの力強い競技を君は目を光らせ
見ていたね 僕は早く君と二人になりたくて
あまり良く覚えていない 終わったらどこへ
行こうか えとえと食事とそれから
歌声喫茶店に行こう
あれからもう五十年
今は二人とも白髪混じり
いいじやないか 行こうよ
思い出探しにスタジヤム
TOKYO五輪へ

思い出探しに  東京五輪 恋人同士の君と僕 アスリートの力強い競技を君は目を光らせ見ていたね 僕は早く君と二人になりたくて あまり良く覚えていない 終わったらどこへ行こうか えとえと 食事とそれから 歌声喫茶店に行こう あれからもう五十年 今は二人とも白髪混じり いいじゃないか 行こうよ 思い出探しにスタジヤム TOKYO五輪へ

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思い出探しに  東京五輪 恋人同士の君と僕 アスリートの力強い競技を君は目を光らせ見ていたね 僕は早く君と二人になりたくて あまり良く覚えていない 終わったらどこへ行こうか えとえと 食事とそれから 歌声喫茶店に行こう あれからもう五十年 今は二人とも白髪混じり いいじゃないか 行こうよ 思い出探しにスタジヤム TOKYO五輪へ
日本郵便大賞

寺坂通一さん (79歳/愛媛県)

来年は傘寿の私。
運転免許証を返納しました。
全身麻酔手術の意識無の世界から、妻や娘達の笑顔に包まれる有の世界に生還した時、決めました。
自分の足と手でこの世界に!
週三の図書館巡り。
乗物はやめて川の土手を歩きます。
様々の野草、特にエノキの根元に可憐に咲く「きつねのまご」との出会い。
「まごに会って来る」と言って出かけます。
どうか、この足が、せめて漱石、大江を読み尽くすまでは痛みませんようにと祈ります!

来年は傘寿の私。 運転免許証を返納しました。 全身麻酔手術の意識無むの世界から、 妻や娘達の笑顔に包まれる有ゆうの世界に生還した時、決めました。 自分の足と手でこの世界に! 週三の図書館巡り。 乗物はやめて川の土手を歩きます。 様々の野草、特にエノキの根元に可憐に咲く「きつねのまご」との出会い。 「まごに会って来る」と言って出かけます。 どうか、この足が、せめて漱石、大江を読み尽くすまでは 痛みませんようにと祈ります!

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来年は傘寿の私。 運転免許証を返納しました。 全身麻酔手術の意識無むの世界から、 妻や娘達の笑顔に包まれる有ゆうの世界に生還した時、決めました。 自分の足と手でこの世界に! 週三の図書館巡り。 乗物はやめて川の土手を歩きます。 様々の野草、特にエノキの根元に可憐に咲く「きつねのまご」との出会い。 「まごに会って来る」と言って出かけます。 どうか、この足が、せめて漱石、大江を読み尽くすまでは 痛みませんようにと祈ります!
日本郵便大賞

矢田 稔さん (87歳/静岡県)

毎月第一金曜日。
ばあちゃとヘルパー 郵便局に
二十余年も 欠かさず貯金
実はばあちゃの孫むすめの
婚礼費用の積立だと
だけど来年は三十じゃけえ。
願いは一つ 良縁どこかになぁ
婚活諦めちゃいけんでの
も一つ この貯金
ばあちゃの葬式代に
絶対しちゃあいけんでの

毎月第一金曜日。 ばあちゃとヘルパー 郵便局に二十余年も 欠かさず貯金 実はばあちゃの孫むすめの婚礼費用の積立だと だけど来年は三十じゃけえ。 願いは一つ 良縁どこかになぁ 婚活諦めちゃいけんでの も一つ この貯金 ばあちゃの葬式代に 絶対しちゃあいけんでの

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毎月第一金曜日。 ばあちゃとヘルパー 郵便局に二十余年も 欠かさず貯金 実はばあちゃの孫むすめの婚礼費用の積立だと だけど来年は三十じゃけえ。 願いは一つ 良縁どこかになぁ 婚活諦めちゃいけんでの も一つ この貯金 ばあちゃの葬式代に 絶対しちゃあいけんでの

郵便名柄館賞

郵便名柄館賞

宮田晟司さん (15歳/高知県)

七夕頃になると図書室に笹の葉が置かれます。
自分はテストの点があまりよくなくて、
単位が落ちてしまいました。
だから短冊に「単位」と書いて吊るしました。
次の日、図書館に行くと、床に「単位」が落ちていました。
次は落ちませんように。

七夕頃になると図書室に笹の葉が置かれます。 自分はテストの点があまりよくなくて、 単位が落ちてしまいました。 だから短冊に「単位」と書いて吊るしました。 次の日、図書館に行くと、床に「単位」が落ちていました。 次は落ちませんように。

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七夕頃になると図書室に笹の葉が置かれます。 自分はテストの点があまりよくなくて、 単位が落ちてしまいました。 だから短冊に「単位」と書いて吊るしました。 次の日、図書館に行くと、床に「単位」が落ちていました。 次は落ちませんように。
郵便名柄館賞

前田研二さん (16歳/福岡県)

ああ、窓から見えるあの月に、人間は本当に行ったんだ――その時僕は生まれていなかったけれど。
あの時からちょうど五十年。
そろそろ二回目が見たいなぁ(僕にとっては最初だけど)。
でも最近思った。
僕は何を待っているのだろう。
僕が行くんだ!
私の祖父と父は宇宙研究をするために世界を駆け回った。
よし、僕は月を駆け回ろう。
宇宙への情熱は僕が受け継ぎます。
神様、僕に月へ行くチャンスをください。
その時までどんな苦難にも耐えます。

ああ、窓から見えるあの月に、人間は本当に行ったんだ ――その時僕は生まれていなかったけれど。 あの時からちょうど五十年。 そろそろ二回目が見たいなぁ(僕にとっては最初だけど)。 でも最近思った。僕は何を待っているのだろう。  僕が行くんだ! 私の祖父と父は宇宙研究をするために世界を駆け回った。 よし、僕は月を駆け回ろう。 宇宙への情熱は僕が受け継ぎます。 神様、僕に月へ行くチャンスをください。 その時までどんな苦難にも耐えます。

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ああ、窓から見えるあの月に、人間は本当に行ったんだ ――その時僕は生まれていなかったけれど。 あの時からちょうど五十年。 そろそろ二回目が見たいなぁ(僕にとっては最初だけど)。 でも最近思った。僕は何を待っているのだろう。  僕が行くんだ! 私の祖父と父は宇宙研究をするために世界を駆け回った。 よし、僕は月を駆け回ろう。 宇宙への情熱は僕が受け継ぎます。 神様、僕に月へ行くチャンスをください。 その時までどんな苦難にも耐えます。
郵便名柄館賞

押切貴紀さん (27歳/東京都)

家を出て六年、
俺も「大人になればわかる」がよくわかる歳になった。
けれどわからなかったあの頃は、夜遅くに仕事から帰る父の疲れが誰のためなのか、
朝早くに寝ぼけ眼で弁当を作る母のつらさがどれほどなのか、考えもしなかった。
今ならわかる。
頑張ってくれていたんだ。
はがき一枚の上にのせてもよい願いなら、俺は家族の幸せを願いたい。
面と向かっては恥ずかしくて言えないので、ここで。
お父さん、お母さん、ありがとう。

家を出て六年、 俺も「大人になればわかる」がよくわかる歳になった。 けれどわからなかったあの頃は、 夜遅くに仕事から帰る父の疲れが誰のためなのか、 朝早くに寝ぼけ眼で弁当を作る母のつらさがどれほどなのか、 考えもしなかった。 今ならわかる。 頑張ってくれていたんだ。 はがき一枚の上にのせてもよい願いなら、 俺は家族の幸せを願いたい。 面と向かって恥ずかしくていえないので、ここで。 お父さん、お母さん、ありがとう

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家を出て六年、 俺も「大人になればわかる」がよくわかる歳になった。 けれどわからなかったあの頃は、 夜遅くに仕事から帰る父の疲れが誰のためなのか、 朝早くに寝ぼけ眼で弁当を作る母のつらさがどれほどなのか、 考えもしなかった。 今ならわかる。 頑張ってくれていたんだ。 はがき一枚の上にのせてもよい願いなら、 俺は家族の幸せを願いたい。 面と向かって恥ずかしくていえないので、ここで。 お父さん、お母さん、ありがとう
郵便名柄館賞

蒼井 陽さん (34歳/広島県)

原爆の日、周りの子らは皆死んだ。
死んだ子の親に言われた。何故あんただけ生きとるんかと。
返す言葉が見つからず、俯いた私を気遣い
それでもわしは生きてやったと、戯けて舌を出した祖母。
あれから二十年。
祖母は少女に戻った。
あの日言えなかった言葉がある。
神様、どうか心の奥で伝えてください。
生きていてくれて有難う。
貴方が居たから、私が居ます。
ケロイドの腕を摩りながら想う。
もう十字架は消し去って、今は心穏やかに。

原爆の日、周りの子らは皆死んだ。 死んだ子の親に言われた。何故あんただけ生きとるんかと。 返す言葉が見つからず、俯いた私を気遣い それでもわしは生きてやったと、戯けて舌を出した祖母。 あれから二十年。 祖母は少女に戻った。 あの日言えなかった言葉がある。 神様、どうか心の奥で伝えてください。 生きていてくれて有難う。 貴方が居たから、私が居ます。 ケロイドの腕を擦りながら想う。 もう十字架は消し去って、今は心穏やかに。

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原爆の日、周りの子らは皆死んだ。 死んだ子の親に言われた。何故あんただけ生きとるんかと。 返す言葉が見つからず、俯いた私を気遣い それでもわしは生きてやったと、戯けて舌を出した祖母。 あれから二十年。 祖母は少女に戻った。 あの日言えなかった言葉がある。 神様、どうか心の奥で伝えてください。 生きていてくれて有難う。 貴方が居たから、私が居ます。 ケロイドの腕を擦りながら想う。 もう十字架は消し去って、今は心穏やかに。
郵便名柄館賞

堀 里音さん (45歳/広島県)

私は、嘘をついています。
子供には、ウソは人を傷付けるからダメと言いながら。
娘は、眼の難病です。
いつか、何も見えなくなるかも知れません。
大好きな絵を描くことも、映画を観ることも、いつか叶わなくなる。
言えなかった。言えずに来てしまった。
娘が未来の道を閉ざしてしまいそうで怖かった。
「かわいい眼鏡かけようかな。」
「眼の体操してみようかな。」
心が痛い。毎日痛い。
一つ願いが叶うのなら、どうかこの嘘が本当になりますように。
ずっと未来が見えますように。

私は、嘘をついています。 子供には、ウソは人を傷付けるからダメと言いながら。 娘は、眼の難病です。 いつか、何も見えなくなるかも知れません。 大好きな絵を描くことも、映画を観ることも、いつか叶わなくなる。 言えなかった。言えずに来てしまった。 娘が未来の道を閉ざしてしまいそうで怖かった。 「かわいい眼鏡かけようかな。」 「眼の体操してみようかな。」 心が痛い。毎日痛い。 一つ願いが叶うのなら、どうかこの嘘が本当になりますように。 ずっと未来が見えますように。

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私は、嘘をついています。 子供には、ウソは人を傷付けるからダメと言いながら。 娘は、眼の難病です。 いつか、何も見えなくなるかも知れません。 大好きな絵を描くことも、映画を観ることも、いつか叶わなくなる。 言えなかった。言えずに来てしまった。 娘が未来の道を閉ざしてしまいそうで怖かった。 「かわいい眼鏡かけようかな。」 「眼の体操してみようかな。」 心が痛い。毎日痛い。 一つ願いが叶うのなら、どうかこの嘘が本当になりますように。 ずっと未来が見えますように。
郵便名柄館賞

上田純子さん (45歳/愛知県)

あなたが生後数ヶ月の時に出ていった父親。
その人をあなたは無関係だと言うけれど、お母さんはあなたを育ててきてドキッとした時がある。
あなたがお肉の脂身を甘くて美味しいと言った時、学校で習ったばかりのコキリコの唄を好んで何回も歌った時、遠野物語の存在を知り没頭して読み始めた時
全てあなたの父親が好きな物ばかりだったから。

私は齢をとって忘れないうちに、あなたの父親について話せますように。

あなたが生後数ヶ月の時に出ていった父親。 その人をあなたは無関係だと言うけれど、 お母さんはあなたを育ててきてドキッとした時がある。 あなたがお肉の脂身を甘くて美味しいと言った時、 学校で習ったばかりのコキリコの唄を好んで何回も歌った時、 遠野物語の存在を知り没頭して読み始めた時 全てあなたの父親が好きな物ばかりだったから。  私は齢をとって忘れないうちに、あなたの父親について話せますように。

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あなたが生後数ヶ月の時に出ていった父親。 その人をあなたは無関係だと言うけれど、 お母さんはあなたを育ててきてドキッとした時がある。 あなたがお肉の脂身を甘くて美味しいと言った時、 学校で習ったばかりのコキリコの唄を好んで何回も歌った時、 遠野物語の存在を知り没頭して読み始めた時 全てあなたの父親が好きな物ばかりだったから。  私は齢をとって忘れないうちに、あなたの父親について話せますように。
郵便名柄館賞

小野澄江子さん (64歳/長野県)

幼い日の哀しみを乗り越え、何事にも前向きに取り組んで来た小さな君の心が悲鳴を上げた。
不登校という形で。
植物は、地に根をおろし養分を吸収し、生きる。
ひげ根一本、つながっているだけでも命は輝き、やがて四方へと根を張り巡らせる。
人も同じ。
人の大地が家庭なら根は人であり書物であり経験であると思う。
ばあばは、ひげ根の一本であり続けよう。
充分な休息の後、心に弾みがついたなら、広い世界へ踏み出す一搾りの勇気を、どうぞ神様、彼にお与え下さい。

幼い日の哀しみを乗り越え、何事にも前向きに取り組んて来た 小さな君の心が悲鳴を上げた。 不登校という形で。 植物は、地に根をおろし養分を吸収し、生きる。 ひげ根一本、つながっているだけでも、命は輝き、やがて 四方へと根を張り巡らせる。 人も同じ。 人の大地が家庭なら根は人であり書物であり経験であると思う。 ばあばは、ひげ根の一本であり続けよう。 充分な休息の後、心に弾みがついたなら、 広い世界へ踏み出す一搾りの勇気を、どうぞ神様、彼にお与え下さい。

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幼い日の哀しみを乗り越え、何事にも前向きに取り組んて来た 小さな君の心が悲鳴を上げた。 不登校という形で。 植物は、地に根をおろし養分を吸収し、生きる。 ひげ根一本、つながっているだけでも、命は輝き、やがて 四方へと根を張り巡らせる。 人も同じ。 人の大地が家庭なら根は人であり書物であり経験であると思う。 ばあばは、ひげ根の一本であり続けよう。 充分な休息の後、心に弾みがついたなら、 広い世界へ踏み出す一搾りの勇気を、どうぞ神様、彼にお与え下さい。
郵便名柄館賞

伊東鉄郎さん (65歳/岩手県)

母ちゃん、今年も穂が出たよ!
穂先の朝露が光って美しい。
経費倒れの米作りはもう辞めよう。
息子は毎年迷い続けてきたさ。
母ちゃんは四つん這いで、蚊と虻を払いながら田の除草仕事。
下校の俺に「お帰り」と笑顔で応える。
55年も昔の風景。
病院で母ちゃんの枯れ木のような両手を握る。
温かかった。
この手で百姓と9人の子育て。
99歳で旅立った。頑張ったなぁ母ちゃん。
俺やっぱ、この田んぼ続けるよ。
新米のごはん、楽しみにな。

母ちゃん、今年も穂が出たよ! 穂先の朝露が光って美しい。 経費倒れの米作りはもう辞めよう。 息子は毎年迷い続けてきたさ。 母ちゃんは四つん這いで、蚊と虻を払いながら田の除草仕事。 下校の俺に「お帰り」と笑顔で応える。 55年も昔の風景。 病院で母ちゃんの枯れ木のような両手を握る。 温かかった。 この手で百姓と9人の子育て。 99歳で旅立った。頑張ったなぁ母ちゃん。 俺やっぱ、この田んぼ続けるよ。 新米のごはん、楽しみにな。

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母ちゃん、今年も穂が出たよ! 穂先の朝露が光って美しい。 経費倒れの米作りはもう辞めよう。 息子は毎年迷い続けてきたさ。 母ちゃんは四つん這いで、蚊と虻を払いながら田の除草仕事。 下校の俺に「お帰り」と笑顔で応える。 55年も昔の風景。 病院で母ちゃんの枯れ木のような両手を握る。 温かかった。 この手で百姓と9人の子育て。 99歳で旅立った。頑張ったなぁ母ちゃん。 俺やっぱ、この田んぼ続けるよ。 新米のごはん、楽しみにな。
郵便名柄館賞

西脇恵子さん (77歳/滋賀県)

平成最后の年に戦争にいった父の遺骨が兄とのDNA鑑定により73年ぶり奇跡的に家に帰ることが出来ました。
シベリアで病死との事できれいに埋葬されてた様です。
私は父の顔も写真でしか知りません。
まして父の思いや無念さをくんでやる事もなく生きてきました。
故郷に戻り安堵し、仏壇の中で眠ってる父の気持が静かに伝わってきます。
今が我家の終戦日です。
あらためて戦争のなき平和な世界であります様願っております。

平成最后の年に戦争にいった父の遺骨が兄とのDNA鑑定により 73年ぶり奇跡的に家に帰ることが出来ました。 シベリアで病死との事できれいに埋葬されてた様です。 私は父の顔も写真でしか知りません。 まして父の思いや無念さをくんでやる事もなく生きてきました。 故郷に戻り安堵し、仏壇の中で眠ってる父の気持ちが静かに伝わってきます。 今が我家の終戦日です。 あらためて戦争のなき平和な世界であります様願っております。

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平成最后の年に戦争にいった父の遺骨が兄とのDNA鑑定により 73年ぶり奇跡的に家に帰ることが出来ました。 シベリアで病死との事できれいに埋葬されてた様です。 私は父の顔も写真でしか知りません。 まして父の思いや無念さをくんでやる事もなく生きてきました。 故郷に戻り安堵し、仏壇の中で眠ってる父の気持ちが静かに伝わってきます。 今が我家の終戦日です。 あらためて戦争のなき平和な世界であります様願っております。
郵便名柄館賞

細田尚義さん (83歳/大阪府)

もう戻らんかな。
小さい字が見えてた目。
どこも痛くない身体。
恐れを知らず、強かった心。
経験と知識を積んで賢くなるはずが、なんやだんだん忘れっぽくなってきてる気がする。
一言主の神様、これは
悲しい事、辛い事は、はよう忘れよ、いう事ですわな。
肝心な事は、メモとりますよって、
亡き妻と綺麗な空から、いつも見守っていて下さい。

もう戻らんかな。 小さい字が見えてた目。 どこも痛くない身体。 恐れを知らず、強かった心。 経験と知識を積んで賢くなるはずが、 なんやだんだん忘れっぽくなってきてる気がする。 一言主の神様、これは 悲しい事、辛い事は、はよう忘れよ、いう事ですわな。 肝心な事は、メモとりますよって、 亡き妻と綺麗な空から、いつも見守っていて下さい。

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もう戻らんかな。 小さい字が見えてた目。 どこも痛くない身体。 恐れを知らず、強かった心。 経験と知識を積んで賢くなるはずが、 なんやだんだん忘れっぽくなってきてる気がする。 一言主の神様、これは 悲しい事、辛い事は、はよう忘れよ、いう事ですわな。 肝心な事は、メモとりますよって、 亡き妻と綺麗な空から、いつも見守っていて下さい。

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